※この記事は『プレシジョンメディシンとは?遺伝子からがんを治療する一人ひとりに合わせて選択する「個別化医療」を解説』(https://cancer-bright.jp/article/post-358/)を抜粋して、読みやすく再編集しております。
プレシジョンメディシンとは、がん細胞の遺伝子変化を調べ、患者さん一人ひとりに合う治療法を提供する医療です。「精密医療」「個別化医療」とも呼ばれ、同じ臓器のがんでも遺伝子変化が異なれば効きやすい薬が変わるという考え方に基づいています。この記事では、仕組みと従来治療との違いを解説します。
1.プレシジョンメディシンとは何か?
プレシジョンメディシンは、患者さん一人ひとりのがんの特徴を遺伝子レベルで調べ、その人に合う治療法を提供する考え方です。日本語では「精密医療」「個別化医療」とも呼ばれます。
従来のがん治療は、臓器名やがんの種類・病期をもとに治療方針を決めます。プレシジョンメディシンではこれに加えて、がん細胞の遺伝子変化やタンパク質の発現、患者さんの全身状態、これまでの治療歴なども組み合わせます。同じ肺がんでも遺伝子変化が異なれば、効きやすい薬は変わります[1]。
※遺伝子を調べれば必ず合う薬が見つかるわけではありません。標準治療を含めた治療全体のなかで検討する必要があります。
2.プレシジョンメディシンはどのような仕組みで進むのか?
プレシジョンメディシンは、主に次の3ステップで進みます。
① 遺伝子パネル検査:がん組織や血液を用いて、数十〜数百の遺伝子変化を一度に調べる
② エキスパートパネル:薬物療法・ゲノム医療・病理・遺伝カウンセリング・バイオインフォマティク スの専門家チームが検査結果を解析し、治療候補を絞り込む
③ 治療提案:担当医が患者さんの状態・希望を踏まえて治療法を提案する
検査で遺伝子変化が見つかると、対応する分子標的薬や治験・臨床試験が候補として検討されます[2] [3]。
3.従来のがん治療とプレシジョンメディシンの違いは?
| 項目 | 従来のがん治療 | プレシジョンメディシン |
|---|
| 治療選択の手がかり | がんの種類、病期、画像・病理検査、全身状態など | 左記に加えて、遺伝子変化や分子の特徴を参考にする |
| 目的 | 科学的根拠に基づく標準治療を中心に、患者さんに合う治療を選ぶ | がんの個別の特徴から、より合う可能性のある治療候補を探す |
| 注意点 | すべての患者さんで同じ治療になるわけではない | 検査しても治療候補が見つからない、または使えない場合がある |
両者は対立するものではなく、状況に応じて組み合わせて検討されます。
4.よくある質問
Q.がん免疫療法と同じものですか?
同じではありません。プレシジョンメディシンは、がんの特徴を調べて治療を選ぶ考え方です。がん免疫療法は薬物療法の一種で、免疫の働きを利用してがんを攻撃しやすくする治療です。検査結果ががん免疫療法を含む治療選択に関係することはありますが、意味は異なります。
Q.希少がんでも役立ちますか?
役立つ可能性はあります。希少がんでは標準治療の選択肢が限られることがあり、遺伝子変化から治療候補を探すことがあります。ただし、候補薬が見つからない、治験に参加できないなどの限界もあります。
まとめ
プレシジョンメディシンとは、がん細胞の遺伝子変化を手がかりに、一人ひとりに合う治療法を探す医療の考え方です。
- 遺伝子パネル検査→エキスパートパネル→治療候補提案という流れで進む
- 従来のがん治療を否定するものではなく、選択肢を広げる考え方
- 検査しても治療に結びつかない場合があり、期待値の整理が重要
実績・課題・受け方・費用については、ほかの記事で詳しく解説しています。
【参考文献】
- [1] 国立がん研究センター がん情報サービス「がんゲノム医療」
- [2] 国立がん研究センター がん情報サービス「がんゲノム医療 もっと詳しく」
- [3] 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT)「がん遺伝子パネル検査とは」